耳の変形(埋没耳・小耳症まいぼつじ・しょうじしょう・その他の耳の変形)

耳の変形(埋没耳・小耳症まいぼつじ・しょうじしょう・その他の耳の変形)

病気の説明

生まれつき耳の大きさや形が正常な耳と違うことがあります。そのような変形はその形や程度によって埋没耳、小耳症、耳垂裂、副耳などに分けられます。どの変形も、片側の耳だけのことも両側のこともあります。

(左)埋没耳
(右)用手的に耳を引き出すことができる
小耳症術前
助軟骨で作成した耳介フレーム
小耳症術後
副耳

病因

母親のおなかの中で赤ん坊の耳ができる時期に、何かの理由で耳の形がうまくできないと生まれた時に変形が残ります。親からの遺伝や耳の周りの血管や筋肉の異常が原因と考えられることもありますが、本当の原因はよく分かっていません。

診断

耳の変形は、特別な検査をしなくても見た目で判断できますので、診断は診察だけでほぼ可能です。ただし、耳が聴こえにくい、顔の表情が作りにくい(顔面神経麻痺)、口角が割けたようになっている(巨口症)、顎がとても小さい(第一第二鰓弓症候群)など、耳の形以外の顔の症状を伴うこともありますので、レントゲンやCTなどの検査で確かめることもあります。

治療

埋没耳

埋没耳は、袋耳とも呼ばれ、耳の上半分が皮膚の中に埋もれています。指でつまんで引っぱると出てきますが、離すと元に戻ってしまいます。そのために、マスクや眼鏡がかけられません。埋もれている耳の上半分には変形があることが多いですが、聴力は正常です。400人に1人程度に見られる比較的多い変形です。
この変形の治療には、装具を着けて矯正する方法と手術で治す方法があります。1歳頃までの耳の軟骨が軟らかい時期は矯正治療が可能ですが、変形の程度や状態によっては矯正が難しい場合もあります。手術は小学校に入る前の5、6歳で行うことが多いですが、この時期には全身麻酔が必要です。

小耳症

小耳症は1万人に1人程度に見られる稀な変形です。耳の形ができあがらずにとても小さい状態で、耳たぶだけがあるタイプが多く、外見上の問題が大きい変形です。耳の穴がふさがっていることも多く、その場合は聴こえも悪くなりますが、片側の聴覚が保たれていれば日常生活上さほど不自由はありません。ただし、埋没耳と同じようにマスクや眼鏡がかけられません。顎の変形などを伴うこともあります。
治療としては、ご本人の胸の軟骨を使って耳の形を作る手術を2回か3回に分けて行います。手術時期は胸囲60cm程度を目安とするので、10歳前後になります。形成外科と耳鼻科の専門医が協力して耳の穴を作る手術を行うこともあります。

副耳

副耳は耳の前や頬にイボのような突起があるもので、80人に1人程度のありふれた変形です。
小さいものは根元を糸でしばって取ることもありますが、副耳の中には軟骨が入っていることもありますので、手術で切り取るのが確実です。

その他の耳介変形

その他にも、耳たぶが割れている「耳垂裂」、耳が立ちすぎている「立ち耳」、耳の上部が折れ曲がっている「折れ耳」などの変形があります。
1歳頃までは、「耳垂裂」を除いて矯正治療で治る可能性がありますが、主な治療は手術です。

著者

東京警察病院 形成外科・美容外科
主任医長 渡辺 頼勝

東京警察病院 形成外科・美容外科

著者

兵庫医科大学 形成外科
主任教授 垣淵 正男

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