生まれつきの顎の変形(小顎症、顔面の非対称)
生まれつきの顎の変形(小顎症、顔面の非対称)
病気の説明
上あご(上顎骨)あるいは下あご(下顎骨)の大きさ、形や位置などの異常によって、顔面が変形し、噛み合わせが悪くなっている状態を顎変形症といいます。その中には生まれつき(先天性)におこるものが多くあります。小下顎症はその一つであり、本症は下顎の成長が悪く、上顎に対して下顎が後退した状態です。明らかな原因は不明ですが、先天性に小下顎症を伴う疾患はいくつかあり、ピエール・ロバン・シークエンス(ピエール・ロバン症候群)やトリーチャー・コリンズ症候群などでは両側に、第一第二鰓弓症候群などでは主に片側に小下顎症をきたします。両側性の場合は、横顔はあたかも鳥の様な顔つき(鳥貌様顔貌)になり、舌の根元が喉の奥に落ち込んで、空気の通り道が狭くなることから、いびきなどの呼吸困難、ひどい場合は寝ているときに呼吸が止まる睡眠時無呼吸をおこします。そのような重症例では呼吸障害を改善するために喉に呼吸用の穴を作成(気管切開)したり、ミルクや食物がうまく飲みこめない場合は鼻から挿入したチューブで栄養を与えたりすることもあります。一方、片側性の場合は骨、さらには軟部組織に発育障害がおこるため顔面が非対称になります。
診断
多くの場合、生まれつき合併している他の異常や特徴的な顔貌から、形成外科医や頭蓋顎顔面外科医にとって診断は比較的容易ですが、顔面骨を詳しく調べるために、レントゲンやCTなどの検査は必要不可欠です。
治療
治療は、症状と成長に準じた対応が必要であり、歯科矯正とともに、小顎変形や顔面の非対称に対する骨格の外科的手術が必要です。近年では骨に切り目を入れ、装置によって骨を徐々に延ばしていく骨延長法の導入により、従来成長が止まるのを待ってから行っていた下顎変形に対する手術も、幼児期より可能となりました。前述のように呼吸障害を伴うような重症の小下顎症では、乳児期のうちに骨延長法を行うことで気管切開を回避する新しい治療法も報告されています。