頭蓋骨縫合早期癒合症
頭蓋骨縫合早期癒合症
病気の説明
赤ちゃんの脳は生後6か月までに生まれた時のサイズの2倍の大きさになり、2歳になるまでに大人の脳の大きさの90%の大きさになるといわれています。身長や体重とくらべるとすごい勢いでの成長です。
このような脳の急速な成長に対応できるよう赤ちゃんの頭蓋骨は7つの骨のピースに分かれており、脳の成長に対応できるようになっています。それぞれの骨片のつなぎ目を頭蓋縫合といいます。頭蓋骨縫合早期癒合症ではこの頭蓋縫合が早期に癒合してしまう病気です。本来、頭蓋縫合がくっついていなければ脳の拡大にあわせて縫合がさけて頭蓋骨が拡大します。しかし頭蓋縫合の癒合があるとその部分では頭蓋骨の拡大がおこらず、頭蓋骨の形がいびつになります。また脳が成長できず窮屈さを感じると、脳の発達に影響を与える可能性があります。
頭蓋骨縫合早期癒合症には頭蓋だけの変形を示す単純性の早期癒合症と頭蓋以外の変形(顔面の低形成や手足の異常)を伴う症候群性の早期癒合症があります。
病因
単純性の頭蓋骨縫合早期癒合症の原因はまだ分かっていません。これに対し顔や手足にも症状をきたす症候群の頭蓋骨縫合早期癒合症(クルーゾン症候群やアペール症候群など)では遺伝性を認めるのもが多く、最近その原因遺伝子が明らかになってきました。
診断
頭蓋骨縫合早期癒合症では特徴的な頭の形あるいは特異な顔貌を示しますが、稀な病気のため、寝ぐせだと診断されることも少なくありません。
病気なのか、あるいは寝ぐせによる変形なのかを診断するにはレントゲンをとって鑑別することが望ましいです。レントゲンで怪しい場合、診断の確定のために3次元CT撮影が有効です。また時に水頭症などの脳の異常を合併することもあるので脳のMRI撮影を撮影することもあります。
治療
脳が窮屈さを感じている場合(頭蓋内圧亢進といいます)や、変形が目立つ場合には手術が必要です。頭蓋の拡大ができないことによる脳への圧迫を取り除くことと、変形した頭蓋の形を整えることが手術の目的です。
そのため治療に関しては形成外科(頭の形を整える)・脳神経外科(脳機能のことを考える)が連携しチーム医療を行っている施設を選ぶことがとても重要です。
治療法には
- 癒合した縫合を切除する縫合切除術
- 頭を1回で大きくする頭蓋形成術
- 頭を少しずつ大きくする骨延長術
があります。どの治療がもっとも優れているかという根拠は未だありません。
いずれの治療法でも、手術は通常、脳の発育を考慮し変形が広範囲に及ばない、生後1歳以下で行われることが望ましいとされています。しかし稀な病気のために発見が遅れることも少なくありません。その場合は診断され次第、治療を行います。
また顔面の変形に対しては呼吸障害がでる場合や、高度の眼球突出がある場合は早期の手術が必要になりますが、それ以外は就学期以降まで待機して手術が行われます。
寝ぐせによる頭蓋変形
頭蓋縫合早期癒合症との鑑別で大切なのが寝ぐせによる頭蓋変形です。いわゆる絶壁あたまもこの寝ぐせによる変形です。
子宮内や産道を通るときの圧迫や、生まれた後の寝ぐせ(片側だけを向いて寝ている)で頭に変形が生じてしまいます。縫合は開いているので脳に窮屈さは生じませんので手術は必要ありません。
このような外力による頭蓋骨の変形は、日頃の抱っこのしかたや寝かせ方(いずれも同じ方向ばかりにしない)に注意することで予防が可能です。しかし変形が強い場合は、耳の位置やおでこ、ときには頬まで左右がいびつになってしまいます。そうなると将来、野球帽がかぶれない、眼鏡がかけにくいといった不都合がでてくることがあります。
近年ではこのような外力による頭蓋の変形に対して自費治療ではありますがヘルメットの装着による治療も行われています。ヘルメット治療は脳の成長に合わせて頭蓋骨の形を誘導していくために生後6か月くらいまでに始めることが推奨されています。
軽度三角頭蓋について
おでこの真ん中に隆起があり、かつ自閉症など発達の遅れを認め、レントゲンやCTで前頭縫合が確認できない場合を軽度三角頭蓋と呼んでいることがあります。
ただこの前頭縫合は成長に伴って生後3か月から2歳くらいで癒合してしまう縫合です。そのため検査で前頭縫合が確認できないから前頭縫合の早期癒合症だと断言できるかどうかは意見が分かれています。
手術の効果も科学的には証明されておりませんので、手術の適応に関しては複数の専門家の意見を聞いてみることをお勧めします。