唇裂・口蓋裂しんれつ・こうがいれつ

唇裂・口蓋裂しんれつ・こうがいれつ

病気の説明

唇裂とは、生まれつきくちびるから歯ぐきにかけて裂け目が見られる形態異常です。一方、口蓋裂とは、口の中の天井部分(口蓋といいます)からのどちんこ(口蓋垂こうがいすいといいます)の部分にかけて裂け目がみられる形態異常です。その間の歯ぐきに裂け目が見られる場合を顎裂がくれつといいます。

唇裂
くちびるから鼻の穴にかけての裂け目です。口と鼻は妊娠中に左右から合わさってくっつきますが、それらがくっつかなかった状態です。口輪筋という口をすぼめる筋肉がはなれてしまっているためにミルクが旨く飲めないことがあります。顔のほぼ真ん中の最も目立つ部位に裂が現れて鼻の形も変形するので、本人をはじめ、ご両親・親族の方の精神的負担が大きな病気といえます。
妊娠5週頃
妊娠14週頃の正常な発育
妊娠14週頃の口唇口蓋裂
口蓋裂
口と鼻との境界、口の中の天井部分の裂け目です。口唇裂と同様に左右がくっつかなかった状態です。しゃべったり食べ物をたべたりするときにのどちんこあたりが持ち上がってふたをしますが、その筋肉がはなれてしまっています。そのためミルクが上手に飲めなかったり、食べ物・飲み物が鼻の方に逆流しやすくなったりします。また鼻から息がもれてしまうと、はっきりとしゃべれなくなります。中耳炎にもなりやすくなります。
妊娠7週頃
妊娠12週頃の正常な発育
妊娠12週頃の(軟)口蓋裂
顎裂
口蓋裂の裂け目が前方の歯ぐきにまでおきた状態です。歯並びがガタガタになったりします。
これらは合わさって生じることも多く、その場合は唇顎口蓋裂しんがくこうがいれつあるいは口唇口蓋裂こうしんこうがいれつと呼びます。裂け目は、右側、左側、両側に生じるものがあり、裂け目の幅や長さの程度も様々です。

病因

500~600人に1人の割合で生じる比較的頻度の高い生まれつきの形態異常ですが、原因は分かっていません。一般的には、環境因子と遺伝因子が複雑に影響しあって生じていると考えられています。原因となる遺伝因子は一つではなく、いくつかの遺伝子が複雑に絡み合っており、誰もがその因子を持っている可能性があると考えられます。その遺伝因子に、高齢出産・ストレス・タバコ・薬剤・ウイルス感染・栄養などの環境因子が絡むことで唇裂・口蓋裂が発症すると現在では理解されています。

診断

特殊な検査は必要なく、ほとんどの場合外見から診断は可能です。最近では出生前に超音波で診断されることもあります。その場合、赤ちゃんが生まれる前にカウンセリングを受けることも可能です。
まれに粘膜下口蓋裂といって、一見閉じているように見える口蓋裂があります。この場合、診断できるのは大きくなってからのことも少なくありません。

治療

唇裂・口蓋裂の治療では医科・歯科にわたる多くの専門家が協力してチーム医療を行う必要があります。良い治療結果を得るためには、医科・歯科にまたがったしっかりとしたチーム治療を行っている施設を選ぶことがとても重要です。
チームメンバーと役割は次のような感じになります

形成外科
一連の治療のリーダー的存在です。
小児科
患者さんの成長発達を見守ります。
耳鼻科
中耳炎をチェックし、必要があれば治療をします。
言語聴覚士
しゃべりかたの評価やその訓練をします。
歯科
哺乳の補助となる装具を作ったり、食事の助言をしたりします。
矯正歯科
歯並びの治療をします。
1.生後~口唇形成術まで

まず唇裂・口蓋裂の赤ちゃんを持ったご両親にとって最初に直面する問題は哺乳です。くちびるや上あごの裂け目から空気が漏れるために十分な哺乳量が得られにくくなっています。しかし、飲み込みができない原因がほかにない限り、適切な対応をすれば口から哺乳することができます。まず、口蓋裂の赤ちゃん向けに販売されている専用の乳首を用いる哺乳方法があります。これらを使用することでほとんどの赤ちゃんは哺乳できるようになります。また、施設によっては、上あごの裂をふさぐ歯のない入れ歯のような装置を赤ちゃんの口の形に合わせて作製し、哺乳の補助とする場合もあります。

2.口唇形成術

生後3か月くらいに行うことが多いです。くちびるの裂け目をふさぐ手術です。同時に鼻の形を治すこともあります。

3.口蓋形成術

1歳から2歳くらい、言葉をしゃべり始める前に行うことが多いです。口の中の天井部分をふさぐ手術です。

4.顎裂部骨移植術

歯が生え替わる頃に行うことが多いです。歯ぐきの欠損部に骨移植を行って閉鎖する手術です。
その後、成長による変化などもありますので、最後に見た目の治療を行うこともあります。
施設によって手術時期や順番、手術回数が違います。さらに手術方法も一つではなく、施設によって工夫され異なった方法で行われています。それは、それぞれの施設でベストと信じている方法を一貫して実践している結果です。唇裂・口蓋裂の治療方法に正解はありません。しっかりとしたチーム医療が確立されていれば、結果に大きな違いはありません。担当医とよくお話しをして、安心して担当施設の治療方法を受けられることをお勧めします。

著者

慶應義塾大学医学部形成外科
講師 坂本 好昭

慶應義塾大学医学部 形成外科

著者

東北大学大学院医学系研究科外科
病態学講座形成外科学分野
教授 今井 啓道