過去の理事長挨拶

2020~2022

理事長挨拶

日本頭蓋顎顔面外科学会 理事長 清川兼輔

日本頭蓋顎顔面外科学会
 理事長 清川兼輔
(久留米大学医学部形成外科・顎顔面外科学講座
主任教授)

 1983年(昭和58年)に創設された伝統ある本学会(一般社団法人 日本頭蓋顎顔面外科学会)は、当初は顔面骨や頭蓋骨の疾患を主に取り扱う学会として発足し発展してきました。私も若い頃本学会の学術集会に参加し、顔面骨の骨切り術や頭蓋骨癒合症に対する頭蓋形成術の斬新さと素晴らしさに深く感動したのをよく覚えています。術後に患者さんの顔貌や頭の形が劇的に変わるのをみて、「こんなことができるんだ。この手術は、まさに患者さんのQOLを著しく向上させることができる。自分もこんな手術ができるようになりたい。」と心から思ったものです。その後本学会は、骨の疾患だけでなく、頭頸部癌切除後の再建外科、唇裂口蓋裂などの顔面の先天異常、顔面神経麻痺、眼瞼下垂症(先天性・後天性)および美容外科などの顔面の軟部組織に関する内容を幅広く加え、現在は会員数が1000人を超える学会にまで成長してきました。また、形成外科医が会員の9割以上を占める学会ですが、矯正歯科や脳神経外科および耳鼻咽喉科などの他科の先生方にも参加していただき、チーム医療による治療の質の向上も目指しています。
 以上のように40年に近い歳月をかけて発展を遂げてきた本学会ですが、近年会員数が伸び悩んでいるのが現状です。また、先日行われた日本形成外科学会のアンケート調査で、本学会の専門医(日形会の分野指定医)を取得したいと答えた形成外科医は、9つある分野の中でなんと7番目でした。このことは極めて由々しき事態と考えられ、今後の学会の発展に不安を残す結果でした。本学会は、形成外科医にとって唯一の臓器といえる顔面を名前に冠する学会であり、日本創傷外科学会と並んで日本形成外科学会の車の両輪と言える学会です。そして、今後形成外科が基本診療科として国民の医療に貢献していく上でも必要不可欠な学会と考えられますので、多くの若い形成外科の先生方が進んで入会し、さらなる発展を遂げていかなければなりません。そのために理事長として最善を尽くして参りたいと存じますので、会員の皆様方におかれましては何卒ご指導、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2018~2020

理事長挨拶

日本頭蓋顎顔面外科学会 理事長 亀井譲

日本頭蓋顎顔面外科学会
 理事長 亀井 譲
(名古屋大学大学院医学系研究科
形成外科学講座)

一般社団法人日本頭蓋顎顔面外科学会は、1983年(昭和58年)に形成外科医を中心に、脳神経外科医、耳鼻咽喉科(頭頸部外科)医、矯正歯科医らにより発足しました。頭蓋骨や顔面骨の変形を治療する頭蓋顔面外科、頭頸部癌切除後の再建を行う頭頸部再建外科、顎の変形を治療する顎顔面外科を中心に、唇顎口蓋裂などの顔面の先天性異常の治療、顔面神経麻痺などの先天性・後天性疾患、顔面の美容外科など、幅広い領域に集学的に診断・治療を行っていく学問を発展、進歩させる学会です。当初は「日本顎顔面外科学会」という名称で発足し3年後に「日本頭蓋顎顔面外科学会」と名称変更がなされ、軟部組織だけでなく硬組織の再建も含めて扱おうという形成外科領域の中でより専門性の高い学会として注目されました。しかしながら30年を過ぎた現在、会員数、学術集会における演題数や機関誌への投稿論文数、何よりも専門医取得者の停滞が見られ、多くの会員から、学会の活性化を求められております。この数年、代議員の増員、機関誌のオンライン化やホームページのリニューアル化などの改革が行われてきましたが、未だ活性化を取り戻したとは言えません。本学会は、創傷外科領域や皮膚腫瘍外科領域などの若い医師が容易に携われる分野と異なり、専門性が高いがゆえに溶け込めることができないのかもしれません。しかし、この専門性が高い部分に多くの会員が魅力を感じるのも事実だと思います。前理事会において、今回若返り理事会を結成していただいたので、若い理事を中心に第15代目理事長として、唯一臓器名のついた本学会を若返らせ、盛大にすべく、また会員数を増加させるべく、魅力ある学会にしたいと思いますので、皆様のご指導、ご協力をよろしくお願いいたします。

2016~2018

~理事長挨拶2~

日本頭蓋顎顔面外科学会 理事長 山本有平

日本頭蓋顎顔面外科学会
 理事長 山本有平
(北海道大学大学院医学研究科・医学部
 形成外科学分野 主任教授)

理事長就任2年目を迎えて

本学会の理事長に就任して1年が経ちました。本学会を活性化させ、日本中の形成外科医から注目を浴びる、先進的な学会に変貌していく為に、私は“4本の矢”を放ってきました。1)医育機関における指導者を中心とした代議員の拡充、2)HPの充実、学会スローガン、会員情報の電子化といった広報活動の活性化、3)専門医制度の変革、4)機関誌のオンライン&完全英文ジャーナル化を、各委員会とともに推し進めてきました。1)~3)に関しては、各委員会の精力的な活動により、大きな成果を得ることができたと考えております。しかし、昨年の定時社員総会にて、4)に関する、機関誌のオンライン化はご賛同いただきましたが、英文ジャーナル化につきましては、一部の方々より、慎重なご意見をいただき、継続審議として今期を迎えております。このミッションをご理解いただき、その実現に向けて、ここに、私の考える機関誌英文化の意義ならびに方策について詳しく述べさせていただきます。

国内学会機関誌の英文ジャーナル化は、研究内容を全世界のより多くの研究者に発信できる大きな意義を有しています。また、若い先生においては、所属施設のプロモーションにおいて、英文学術論文業績を多く必要とし、その価値がより高まる傾向です。さらに、最近、PRS-GO など、外国雑誌における日本人の英語論文採択の入り口は狭くなり、また掲載の有料化も進み、国内学会誌の英文化の流れは、今後ますます大きくなっていくことでしょう。将来的には、各学会機関誌は、原著、症例報告、手術手技を中心として掲載する英文電子ジャーナルとなり、総説・特集等は、雑誌形成外科やPEPARS等の和文商業誌や各種和文教科書に掲載される潮流になっていくことが予見されます。

このような理由より、私が理事長を務めている日本頭蓋顎顔面外科学会では、形成外科領域における他学会に先駆けて、機関誌の英文ジャーナル化を目指しております。方策としては、最初から、ネイティブではない日本人筆者と査読者間の、英語だけのコミュニケーションによるやりとりでは、学会員からの論文投稿数の増加は見込まれず、また査読者にも大きな負担が生じることと存じます。まずは、投稿言語の門戸を広げ、日本語または英語論文形式で投稿して頂き、筆者と査読者が十分に討議を行い、論文形式として完成させます。その後に、優れた論文として学会サポートによる完全英文化を行い、 globalに公表する方向性です。そのため、今後掲載される論文は、従来の機関誌掲載和文論文より、質のハードルはさらに高くなると考えております。そして、新しく英文ジャーナル化した学会機関誌は、例えば“Cranio-Maxillo-Facial Plastic Surgery”(候補)などの名称となり、電子ジャーナルとして国際的な評価を受けることとなります。

日本の形成外科は、これまでの先人達の努力により、変革、革新を目指す歴史を歩んできました。そして、これからも常に新たな道を切り拓いていく診療科であると思います。私は、まだ、時代的に早すぎる試みかもしれませんが、日本における他診療科への先駆けの第1歩として、“今後の若い学会員の英文学術論文執筆を、国内学会自らがどのようにサポートしていくか”という大きな命題に対して、今回の試みを提案させて頂きました。この国内学会による英文学術論文サポート事業は、成功すれば、今後多くの諸学会が、一つの模範として追随していくことになるかもしれません。それは、これからの歴史が判断することでしょう。近い将来には、人工知能:AIが、これまでに公表された全ての言語で書かれた学術論文を、ビッグデータとして記憶し、どんな言語で書かれた学術論文も、翻訳者や、時には査読者を必要とせずに、一瞬で適切に翻訳できる時代が訪れることでしょう。その時までの繋ぎの方策かもしれませんが、本ミッションの実現に向けて、今後とも、皆様のご協力、ご指導を賜りながら前進して行きたく存じます。

~本内容の一部は、雑誌 形成外科「形成外科 Topics !」に依頼原稿として投稿中である。

~理事長挨拶1~

一般社団法人日本頭蓋顎顔面外科学会は、主として頭蓋・顔面の骨格性変形に対して、形成外科医が中心となって脳神経外科医、耳鼻咽喉科医(頭頸部外科医)、矯正歯科医等とチームを組んで治療を行う頭蓋顎顔面外科を日本に定着させるため、昭和58年(1983年)に発足いたしました。発足時における本会の趣旨は、「本学会は頭蓋・顔面骨などの疾患を一義的に扱う外科を対象とする学会(初代理事長 難波雄哉先生記)」、という説明がなされております。当初は「日本顎顔面外科学会」という名称で発足し、3年後に「日本頭蓋顎顔面外科学会」と名称変更がなされ今日に至っております。学会発足当初は、軟組織の再建外科を中心とした形成外科領域の中に、新たに硬組織の再建外科という領域の学会を立ち上げるという、日本における形成外科の新展開に対して多くの形成外科医が注目し、本学会に参加をいたしました。しかし、学会発足後30年余りを過ぎ、会員数、学術集会における演題数、機関誌への投稿論文数、学会専門医取得者数等が近年停滞傾向であり、多くの会員の皆様より本学会のさらなる活性化を望む声が寄せられております。そのため、ここ数年、役員や名誉会員を中心に将来の学会像に向けた改革案が討議されてきました。このような背景を元に、私は、この度第14代理事長を拝命し、次のような活動方針の下に、学会の発展に尽力していく所存であります。

本学会は、頭蓋顔面の骨格性変形を治療する頭蓋顔面外科、顎を中心とした骨格性変形を治療する顎顔面外科、頭頸部癌の再建治療を行う頭頸部再建外科、唇顎口蓋裂・小耳症等の顔面先天性発育不全の治療、顔面骨骨折の整復、外傷及び腫瘍切除後の顔面組織の再建、顔面神経麻痺や眼瞼下垂等の顔面先・後天性疾患の治療、顔面の整容・美容外科等、顔面とその近接する頭部や頸部などの領域における幅広い疾患に対する集学的な外科治療の進歩、発展に努めていきます。

学会活動の活性化には、代議員の皆様からのご助言、ご協力、そしてご指導が何より重要でございます。定款に定められた代議員定数(正会員数の1割未満の人数)は、正会員の専門診療科群の割合から見ますと、形成外科:100名、歯科:6名、その他の診療科:4名です。しかしながら、現在、本学会の代議員数は、形成外科:71名、歯科:6名、その他の診療科:3名であり、歯科を除いて、定数は満たされておりません。今後は、特に大きな不足定数が生じている形成外科群代議員の増数を目指し、医育機関において指導的な立場におられる先生やこの領域で活躍しておられる若手医師を積極的に登用し、本学会の発展に努めていきたく存じます。

また、これから活躍が期待される若い世代の先生には英文業績が多く求められる時代になりつつあります。 私は、将来の日本における医学分野における学会発行の機関誌、学術雑誌は、電子化のみならず、完全英文化の流れを予見しております。その第一歩として、本学会機関誌を完全英文電子ジャーナル化とし、原著、症例報告、手術手技を中心として掲載する方向を目指していきたく存じます。まだ、時代的に早すぎる試みかもしれませんが、その実現に向けて挑戦していきたく存じます。今後、総説・特集等は、雑誌形成外科やPEPARS等の和文商業誌や各種教科書に掲載される潮流になっていくことでしょう。

さらに、頭蓋顎顔面外科領域における幅広い対象疾患を鑑みた専門医制度の見直しや学術講習会の開催形式の再検討等についても推し進めていきたく存じます。

そして、これまで以上の多くの会員の皆様が、
“この学会における診療領域の専門医になりたい!
この学会の扱う診療領域の学会発表をしたい!
この学会に関する診療領域の研究論文を書きたい!”
と思って頂けるような学会にしていきたく存じます。

最後になりますが、本学会は、形成外科が関連する臓器名を冠する唯一の学会であり、国民の皆様に形成外科診療のご理解を頂き、積極的に広報していくために、大きな責任を有しております。2016年11月9日、米国大統領選挙において、大方の予想を覆してトランプ氏が候補指名された印象的な日に、本学会社員総会において、学会活動の活発化のために、代議員の過半数が本学会の名称を変更する必要性を支持しました。その事実を重く受け止め、これからの多様な学会運営を展開していきたく存じます。

本学会の発展のために、会員の皆様には、ご理解とご協力を賜りますようお願いいたします。

~前理事長 川上重彦先生 平成27年9月声明文より一部引用