理事長挨拶
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理事長挨拶
日本頭蓋顎顔面外科学会
理事長 奥本隆行
(藤田医科大学 形成外科 教授)
本学会は1983年(昭和58年)に日本顎顔面外科学会として創立され,形成外科が中心となって顎顔面領域の外科治療に関して耳鼻咽喉科,矯正歯科などの関連各科が横断的に議論する場として発足しました。当初は“頭蓋”を含まないと定款に記してありましたが,欧米では“クラニオフェイシャルサージャリー(頭蓋顔面外科)”として頭蓋から顔面に至る一連の変形を頭蓋からアプローチする外科治療が発展し,1983年に国際頭蓋顔面外科学会(The international Society of Craniofacial Surgery:ISCFS)が設立され,1985年に第1回国際頭蓋顔面外科学会学術集会がフランスにてPual Tessier名誉会長のもと開催されました。日本からも難波,藤野ら形成外科医が参加し,これを機に本学会理事会に諮り,1986年の第4回から現在の日本頭蓋顎顔面外科学会に名称変更して現在に至っています。
本学会は当初,頭蓋から顔面の骨に異常をきたす先天性疾患や外傷,後天性変形などに対して骨の修復を通して治療する外科学会として発展してきました。その後徐々に会員数も増加し,硬組織のみならず軟部組織に対する治療への関心が高まり,顔面神経麻痺や眼瞼疾患,頭頸部悪性腫瘍,口唇外鼻変形,耳介変形,等々に対する再建手術やさらには美容外科などもそのテリトリーとなり,現在では“顔”を治す外科の中心的学会として発展を遂げてきています。
私が2022年に第40回の学術集会会長を務めさせていただいた際に掲げたテーマは“Aesthetic Mind”でした。この言葉は私が若き頃,恩師から常にAesthetic Mindを忘れることなく,患者さんの治療にあたらなければならないと教えられてきたことによります。形成外科全般においてこのmindは重要ですが,とりわけ頭蓋顎顔面領域においては美容外科に限らず先天異常,外傷,再建外科いずれにおいてもこのmindを持たずして治療は成り立ちません。機能美という言葉があるように機能を追求した結果,形態は機能に従うといわれ,自然に表れる美しさとなります。硬組織から軟組織まで機能と整容の両立を図ることで真の意味で患者さんのQOLを高めることができ,それはわれわれ頭蓋顎顔面外科医にとっての最大の喜びでもあります。
会員数は現在1100名を超えて全体としては横ばいから微増傾向です。形成外科の会員数が最も多く全体の87%を占めていますが,近年歯科領域特に矯正歯科の先生方の参加は増加傾向にあり,全会員数の11%に及んでいます。このことは頭蓋顎顔面外科領域における矯正歯科の重要性の認識が高まってきている表れと考えます。耳鼻咽喉科や脳外科の先生方の会員はまだまだ少ないですが,本学会の使命は,本領域の治療に携わる専門家が領域の垣根を越えてそれぞれの専門性を互いに高めあい,チーム医療を行うことにより,悩みを抱える患者さんに寄り添って治療を行っていくことに他なりません。本学会には学会認定の専門医制度がありますが,専門性の高い学会ゆえにその取得率は決して高くはないものの,意欲ある若手の先生方には積極的に資格取得を働きかけていきたいと思います。そのためにも本制度制定時より長らく暫定運用となっていた認定施設に関しては正式に施設認定を行い,専門医の拡充とともに患者さんが安心してかかれる専門施設の紹介に繋げることができればと考えています。また本領域に関わる矯正歯科医の先生方が増加してきていることに合わせて,歯科分野(特に矯正歯科)の専門医認定制度の立ち上げも進める予定です(ISCFSにはすでにcraniofacial orthodontistという資格があり,その日本版の構築を目指します)。
学会の主たる活動は年1回の学術集会とそれに併せて行われる学術講習会,さらには年4回の学術誌の発行ですが,今後はより実践的な手術手技の向上を目指したワークショップなども各地で開催できればと考えています。
理事長として多くの患者さんの負託に応えられるように本学会を発展させ,会員の皆様に対しては専門性の高い学会としてステータスのあるますます魅力的な学会となるように最善を尽くしてまいりたいと存じます。皆様のご協力,ご指導を賜りながら進んでまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。